研究概要 |
『自己制御型固体変位素子に関する基礎的研究』は今年度が3年目で最終年度である.平成7年度と8年度に導かれた研究成果を基に,平成9年度は一般的な多層複合平板,すなわちn(≧3)層の圧電セラミックスと1層の等方性構造材料によって構成される多層複合平板を対象に固体変位素子に関する解析的研究を行った.初めに,温度場の理論解析を行い,各層の温度分布を導いた,次に,弾性場と電気場の逆問題の理論解析を行い,等方性材料層に生じる熱変形を制御するために圧電セラミックスに印加する電位差を導いた. 次いで,等方性構造材料として鋼,圧電セラミックスとしてセレン化カドミウムを例に導かれた解析結果に基づいて数値シミュレーションを行い,等方性構造材料層の変位分布を規定された状態に変形させるために圧電セラミックス層に印加する電位差分布及び複合平板の応力状態,特に圧電セラミックス層に生じる引張応力やせん断応力について検討した.さらに,圧電セラミックス層の数や層の厚さが印加電位差分布や応力状態に及ぼす影響を詳細に調査した.その結果,圧電セラミックス層が増えるのにつれて,印加電位差は低くなり,圧電セラミックス層に生じる最大せん断応力も小さくなるが,最大引張応力は大きくなることが示された.また,圧電セラミックス層が薄くなるにつれて,印加電位差は低くなり,圧電セラミックス層に生じる最大引張応力も小さくなるが,最大せん断応力は大きくなることが明かになった.特に,等方性構造材料層に接着された圧電セラミックス層をある程度厚くしたとき,圧電セラミックス層に生じる最大引張応力と最大せん断応力が小さくなることが示された. 本研究の取りまとめとして,圧電セラミックスのせん断強度と引張強度の下に,圧電セラミックス層に印加する最大電位差を低くする観点から固体変位素子を最適的設計する基礎的資料を示し,研究成果を論文として公表する予定である.
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