製造業においては工程の効率化、加工および計測の高精度化、自動化等の要求が高まっており、これに応えるため加工中あるいは加工のアイドル時間中に円筒加工物の直径を音響の位相差を利用して測定する新しい方法を考察し研究した。 まず、音波が円筒加工物に入射するときの理論解析を行った。すなわち、音源からの音波の入射波の速度ポテンシャル、散乱波の速度ポテンシャルおよび反射波の速度ポテンシャルの理論式を導き、音波の位相変化と円筒軸径との関係を理論的に明らかにし、位相変化を測定することによって円筒軸の直径の測定が可能であることが理論面から明らかとなった。 さらに、実験装置を用いて実験を行っているところである。平面スピーカから平面波を円筒軸中心線に垂直に放射し円筒軸に対してスピーカと反対側にマイクロホンを設置し、マイクロホンに入る音波は精密騒音計を通してFFTアナライザに入力されている。まず基礎的な実験データをとるため、スピーカと円筒軸の距離および円筒軸とマイクロホンの距離が軸径の測定範囲や測定精度に及ぼす影響を明らかにするため、2つの距離を種々変化させて実験した。さらに円筒軸の表面の仕上げ状態(表面あらさ、うねりなど)や、円筒軸周辺物の反射、吸音が測定精度に及ぼす影響も実験的に明らかにした後、円筒軸直径を種々変化させて位相差を測定する実験を行った。その結果、音響の位相差を用いて円筒軸の直径を測定することが可能であることが明らかとなった。さらに直径の測定可能範囲を広げるための条件を見出すべく実験を続けている。
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