本研究は超音波を利用した電子部品マイクロ接合部のインプロセス品質評価法の開発を目的として、平成7年度は遅延材を利用したマイクロ接合部への超音波の送受信法を開発した。平成8年度は遅延材を利用した超音波測定によるワイヤボンディング部の評価と集束探触子の多重反射特性を利用したダイボンディング部の評価を行った。得られた主な結果は以下の通りである。 1.遅延材を利用したワイヤボンディング部の超音波測定 ワイヤボンディングの工具(キャピラリー)を遅延材として、直径約0.1mmのワイヤボンディング部に超音波を送信し、接合状態の異なる接合部からの反射波を用いてその品質評価を行った。その結果、 (1)ワイヤボンディング部の超音波測定で得られる反射波には、キャピラリーとワイヤボンディング部の境界からの反射波とワイヤボンディング部を通過してチップ底面から反射された反射波が重畳している。チップ底面からの反射波はプッシュテストの剥離強度と非常によい相関がある。 (2)ワイヤボンディング部の超音波測定に影響を及ぼす因子としては、測定圧力、キャピラリーとワイヤボンディング部の接触状態、接触媒体などがある。これらをワイヤボンディング加工中の条件に対応させても品質評価が可能であり、インプロセス測定にも応用できる。 ことなどが明らかになった。 2.多重反射特性を利用したダイボンディング部の超音波測定 試験片にはリ-ドフレーム上に1Cチップを銀ペーストでダイボンディングしたものを用い、その品質評価は集束探触子によるリ-ドフレーム内の多重反射波を利用する超音波測定法で行った。また、集束探触子を利用した超音波測定では測定媒質として水を使用することが多いが、電子部品への腐食や吸湿などの悪影響を考慮して、揮発性の測定媒質による測定も行った。その結果、 (1)X線透過試験で検出されたペースト不足による接合不良部の他に、X線では検出できなかったはく離部の検出も可能となった。 (2)揮発性の測定媒質では、音速の違いによって測定条件が異なるが、浸透性の良い媒質は接合不良部の他に、測定媒質の浸透のためにはく離部からの反射波が顕著に現れ、実用的な観点からも有効なことが明らかとなった。
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