研究概要 |
NC工作機械を始めとする数値制御機械の運動は,微小なステップ運動の集積として実現され,その運動はインディシャル応答のような過渡的運動の連続である.このようなステップ運動時の案内面の摩擦特性は,連続運動時の摩擦特性と異なることを予測して研究を始めた.平成7年度は,すべり案内される質量150kgのスライダを運動体とする実験装置を用いて,ステップサイズが1nm, 10nm, 100nm, 1000nmで,平均速度が0.15μm/secから5μm/secの往復繰り返し運動実験を行い,ステップ運動で構成される数値制御運動におけるすべり案内面の摩擦特性とそのときのスライダの運動挙動について検討した.潤滑油,面圧およびすべり面材料については固定して実験した。 その結果、ステップサイズが小さいときの数値制御運動における摩擦特性は,連続運動時の特性と同じであるが,ステップサイズが大きくなると,たとえばステップサイズが100nm/stepの運動では摩擦力が連続運動のときの2分の1に,また1000nm/stepの運動では摩擦力が負になることがあるなど,従来知られていない特異な摩擦特性が発生することが明らかとなった.そして、この現象は運動方向の反転に伴う反転直後のquasi-elastic region (QE領域)、すなわち運動変位の増加と共に摩擦力が徐々に増加する領域の存在に起因することが明らかになった。この領域は反転直後数百nmの変位領域に存在し、微小ステップ運動を基礎にする超精密運動機械の運動にとって無視できない。さらに、この領域に運動変位の増加に関わらず摩擦力が一定となるconstant force region (CF領域)が続き、両領域の摩擦特性の根本的な違いが、ステップサイズの違いによるスライダの運動の制御性の違いの原因となることを突きとめた。 次年度は、この摩擦特性とスライダの微小ステップ運動の挙動との定量的関係を明確にすること、およびこれらの特性に及ぼす潤滑油、面圧、すべり面材質の影響について研究を進める。
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