本研究では、大型工作物に対する局所加工において加工精度を向上させるための加工システムを検討し、μmオーダの加工精度を得る多自由度加工システムであるローカル・マシニング・ステーション(LMS)を開発することを目的とする。 平成7年度は、伸縮可能な3本のアームから構成されるパラレルリンクメカニズム(PLM)を試作して、その基本性能を以下の項目について検討した。 (1)パラレルリンクメカニズム部の構成 3個の圧電素子からなるインチワ-ム機構により1本のアームを構成これを3組製作したPLMとした。各アームの伸縮量の計測には、リニアポテンショメータを採用し、この信号を用いてフィードバック制御を実行した。また、重力の影響を考慮して負論理クランプとした。これにより、電源を切断した場合にも姿勢を保持することが可能である。 (2)局所座標内の位置決め装置 PLMの各アームの取り付けプレートに、モータで駆動される小型のxyステージを搭載し、これを加工の際の移動基準面としてLMSを構成した。 (3)運動性能の評価 試作したLMSを市販のNC加工機上に装着して、システム全体の運動性能を評価した。位置決め精度の検討には多面体校正法による機上計測法を適用した。3本のアームからなるPLMの運動性能は、それぞれのアームとなるインチワ-ム機構のバランスに依存していることが明らかになった。各インチワ-ム機構の性能は、クランブ部における摩擦の程度によって左右される。今後、この摩擦力を安定に保つ工夫が必要であると考えられる。 (4)位置決め性能 PLMと移動基準面とから構成されるLMSの加工物に対する位置決め精度は、リニアポテンショメータの精度および信号ノイズによって決まり、その値は30μm程度であった。したがって、移動基準面状に非接触変位計を装着して精度の向上を図る必要がある。
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