本研究では、大型工作物に対する局所加工において加工精度を向上させるための加工システムを検討し、μmオーダの加工精度を得る多自由度加工システムであるローカル・マシニング・ステーション(LMS)を開発することを目的とする。平成8年度は、伸縮可能な3本の脚から構成されるパラレルメカニズムを試作してその基本性能を検討するとともに、加工実験を行った。 (1)パラレルメカニズム部の構成 3本の脚を持つLMSを試作した。昨年度は、脚にはインチワ-ム機構を用いていたが、クランプ部の摩擦力により駆動力が制限されるため、駆動力が十分でないことが明らかになった。そこで、本年度は脚には送りねじと電磁モータより構成される直動機構を用いた。各アームの伸縮量の測定にはリニアポテンショメータを用いた。これらの出力をフイ-ドバックすることでPI位置制御を行う。 (2)局所座標内で移動する小型工作機械 ベースプレートにステッピングモータで駆動される小型のxyステージを搭載し、これを加工の際の移動面として用いることにした。このステージ上には、被加工面との距離を測定するためのレーザ式変位計とペンシルサイズ放電加工機を搭載した。 (3)運動性能の評価 試作したLMSの運動性能を評価した。脚の伸縮を測定するためのポテンショメータの精度が10μmオーダであるため、全体の位置決め精度も10μmオーダとなった。レーザ式変位計の分解能は数10μmオーダであり、LMSは精度よく位置決めできていたと言える。 (4)被加工物の形状を基準とした加工 被加工物上にあらかじめ加工されている2個の穴を基準として被加工物上に座標系を設定し、その座標系の上で加工を行った。穴の位置誤差は、20μm程度であった。
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