本研究においては、部分安定化ジルコニアとニッケルを混合し、焼結し、これら機能材料の加工特性を明らかにすべく、超砥粒による研削加工を実施した。それぞれの成分比を種々変え、一軸加圧および静水圧により圧縮固化する。酸化の影響を防ぐため、真空炉を用い、1573Kで焼結した。一つの焼結体から4本の試料を得ることができる。 曲げ試験の結果、90wt%ZrO_2-10wt%Niをピークに、Niの含有量が増えるにしたがって低下した。また、ジルコニアの多い試料では脆性的に破壊したのに対して、Niの含有量の多い試料では伸びが見られた。これは、ジルコニアの多い試料では、ジルコニア粒子の結合が多くあると考えられ、セラミックスの特性に近いと思われる。一方、硬さ試験の結果では、100wt%ZrO_2よりも、90wt%ZrO_2-10wt%Niの方が硬さが大きくなったが、これはジルコニア結晶の間にNiが入り込み、結晶構造が密になったためと思われる。また、それ以降は、Niの含有量が増えるにつれて、減少し、Niの特性に近づいている。ジルコニアが多い場合、ジルコニア間にNi粒子が分散しており、Ni粒子同志は結合していない。逆に、Niが多い場合、Ni間にジルコニア粒子が分散しているが、ジルコニア粒子同志は結合している。Niに比、ジルコニアはかなり小さく、ジルコニアが多い場合、Niの回りにジルコニアが多数着くことによって、Niが結合するのを防いだものと思われる。これらの特徴が曲げ試験の結果に出たものと思われる。 研削実験の結果、砥粒径が大きいほど、m相量の増加は小さくなった。相変態による体積膨張により、クラックが発生し、応力緩和が起こったためと思われる。砥粒径が大きいとき、研削加工後の曲げ強度は未加工のそれよりも低下した。しかし、砥粒径が小さくなると、強度の低下はなくなり、SD325/400で加工したものの強度は未加工のものよりも、わずかだが強度が増加している。SD140/170で研削した加工面にはクラックが発生した。また、ジルコニアの多い試料ではNi粒子が脱落した跡が見られる。Niが多い試料について、Niの塑性変形とジルコニアの脆性破壊面が研削方向に平行に存在していた。砥粒径が小さいとき、m相量の増加に伴う強度の増加が見られ、研削加工を施す際の貴重な一知見を得た。
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