研究概要 |
(1)SiC粒子で強化したアルミニウム基複合材料(MMC)のディスク試験片とS45C鋼のピン試験片を組合わせて乾燥摩耗試験を行った.その結果,SiC粒子による強化は摩擦初期のシビヤ摩耗を抑制あるいは軽減する効果があるが,相手材への攻撃性を大きくする.一方,定常域のマイルド摩耗に対する強化粒子の影響は比較的小さいだけでなく,粒子含有率が大きくなると摩耗率を増加させる傾向を示す. (2)マトリックス材と粒子強化MMCのピン試験片とS45C鋼のディスク試験片を組合わせて真空中で摩耗試験を行った.その結果,マトリックス材とMMCの摩耗率は雰囲気圧力が低下するほど減少するようになり,高真空中(5x10^<-4>Pa)では大気中の約1/100倍になる.また,真空中ではMMCの摩耗率はマトリックス材よりもかなり小さくなり,特に粒子径20μmでは摩耗粒子が移着を繰り返すためほとんど摩耗しなくなる. (3)MMCをピンあるいはディスク試験片にして,硬さの異なる鋼と組合わせた摩耗試験を行い,MMCの摩耗に及ぼす相手材の影響について考察した.その結果,相手材の摺動面がMMCのそれよりも大きい組合わせ場合,MMC摩擦面と鋼摩擦面との異種材同士の凝着摩耗が生じるが,相手面がMMCよりも小さい組合わせの場合,MMC摩擦面と相手面のMMC移着物との同質材同士の摩耗が生じることがわかった.結局,相手材の鋼の硬さは,前者では機械的因子として凝着部の破壊の程度に,後者では化学的因子(活性)として摩耗粒子の相手面への移着の程度に影響を及ぼすことが明らかになった.
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