研究概要 |
本研究は,1μm以下の微視的領域における送りねじ(ボールねじおよびすべりねじ)の変位挙動に着目し,種々の条件によって微視的変位挙動がどのように変化するかについて実験的に明かにするとともに,その動的なモデルを確立することを最終的な目的とする.本年度はその初年度として,まず送りねじ単体の微視的な変位挙動を測定可能な実験装置を設計・制作し,いくつかの予備的実験を行って実験装置の信頼性を高め,次年度に行う本格的な実験と考察の準備を完了することを目標とした. ねじ軸固定・ナット回転型方式で,ナットはねじ軸のみと接触し周囲から完全に浮動した構造の実験装置の設計と制作を完了した.ナットに対する回転トルクの印加を非接触で行うため,ソレノイドを設計・制作し,電流制御型の駆動アンプにより正逆両方向のトルクを静的および動的に印加することができる.また実トルクを検出するため微小トルク用のロードセルを制作して設置した.さらにナットの回転角度と軸方向変位を非接触で測定するため,分解能10nmの静電容量型変位計を3個配置した.以上の機構部とコンピュータを接続し,オンラインでトルクの制御と変位データの取得が可能な実験システムを構成した. 製作した実験装置と,ねじ軸外径32mm,リ-ド5mm,回路数2.5巻2列のダブルナット型ボールねじを用いていくつかの予備実験を行った.まず本実験装置により,トルク制御による1μm以下のナットの微視的変位挙動が測定可能であることを確認した.またその領域でのトルクとナット変位の間には非線形なばね特性が認められ,予圧の増加に伴いばね性を示す範囲が拡大し,ばね特性の線形性が良好になるという実験結果が得られた.以上により,次年度に行う予定の系統的な実験の準備が完了し,本年度当初の目標を達成することができた.
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