本研究では、工学システムの概念設計を念頭におき、設計作業の効率化、設計ミスの回避や過去の設計の新規設計への有効利用など、設計作業を支援するインテリジェントCADシステムの要素技術を検討している。平成7年度は、(a)設計情報の表現方法の検討、および(b)設計目標、機能、構造を組織的有機的に表現するためのインタフェースシステムの開発を行った。 (a)では、セントラルヒ-ティングシステムや原子力プラントのようなシステムではLindの提案する機能モデリングの一手法であるMultilevel Flow Modelingにより情報表現が出来ることがわかった。しかし、MFMでは目標間の関係や構造の表現が不十分であったので、設計情報を網羅するための三層表現(目標レイヤー、機能-目標レイヤー、機能-構造レイヤー)の拡張MFMを提案した。また、研究テーマ(b)に関連して、拡張MFMモデルをエンジニアリングワークステーションに表現するインタフェースシステムを開発し、セントラルヒ-ティングシステムを例題に情報表現を行った。 さらに、機械システムへの拡張MFMの適用性について、電動車駆動系を例題として予備的な検討を行い、以下のような問題点が明らかとなった。すなわち、(1)機械システムにおいては力のモデル化が重視されるが、拡張MFMでは力の伝達はエネルギーの流れとして表現しなければならず、エネルギーの形態の変化を明確にモデル化できない。また、(2)従来の機械設計における設計図のような構造を主とした情報表現がなく、設計図との親和性が低い。(1)に対しては、エネルギーを力学的エネルギー、熱エネルギー、電気エネルギーなど、形態に応じて細分化して表現することにより、理解し易いモデルが得られることがわかった。一方、(2)に対しては、構造を主として機能との関連づけを行う構造-機能レイヤーの追加を行った。
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