研究概要 |
光ファイバと導波路の組立,しゅう動形磁気ディスクのトラッキング等の情報機器におけるしゅう動形位置決め機構のマイクロ化においては,一般的に,摩擦力が精度低下の要因になる. 特にマイクロ領域では,表面力である摩擦力が支配的になり,不感帯の増大やスティックスリップの発生により,位置決め精度はさらに低下する. しかしマイクロ領域の機械(マイクロメカニズム)では,センサの組み込みが難しく,また微小質量のため慣性力がほぼ0に等しい系を扱うことになる. このため,大きな摩擦力が働く柔軟性を,オープンループで位置決めする設計法の確立が必要となっている. 本研究では,マイクロメカニズムの特徴である微小質量のしゅう動位置決め系として,片持梁を対象にし,まず,固定端をステップ駆動した際に発生する不感帯とスティックスリップの特性を明らかにした. この結果,スティックスリップの発生により,位置決め誤差やばらつきが,スティックスリップのタイミングに依存してしまうため,増大することが分かった. ついでこれに基づき,微小質量の位置決め系設計法の1つとして,スティックスリップが発生してもオープンループで位置を決めてできる設計法を確立した. この方法は、アクチュエータを位置決め系の固有周波数より高い周波数で振動させることで,微小質量の位置決めが可能であることを示している. これは,微小質量がスティックスリップを生じても,スリップ中の周期が位置決め系の固有周波数の約半分となるので、スリップ中に,アクチュエータを目標位置よりプラス側に移動することができ,微小質量は目標位置を超えないため、オープンループでの位置決めが可能となっている. さらに微小質量の典型例として光ファイバの位置決め系に適用し,使用可能であることを示した.
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