研究概要 |
潜水病に代表される減圧症は、潜水時における高圧環境から常圧に戻る際、高圧下の生体中で溶解したガスが環境圧の低下により気泡となって発現し,細動静脈などの末梢循環系障害を引き起こすものと理解されている。しかしながら、生体中における気泡の微視的成長、さらにその成長・発達に至る機構については有用な知見がほとんど得られておらず、減圧症発生の物理的機序に関しては不明な点が多く残されている。本研究は、この課題の究明を目的とし、高液圧制御容器にマイクロビデオ装置を組込んだ加減圧型気液二相流動装置を作成し、以下の実験IおよびIIを行った。 実験Iでは、減圧力差によって生ずる静止液体中の微細気泡の生成について実験を行い、次のことを明らかにした。(1)液中では、直径0.5〜2.0mmの大きさの気泡が発生する。(2)液圧差の増加に伴って、気泡数密度が増加する。(3)二酸化炭素は空気に比べて、水中への溶解量が大となるため、気泡数密度は増大する。 実験IIでは、ガス過飽和液体を作動流体とするチャンネル内気液二相流の実験を行った。その結果、次のことが明らかにされた。(1)チャンネル内では、直径20〜100μmの微細空気泡が発生した後0.6〜3秒程度の時間内で急成長する。この時の成長速度は、液体への初期ガス加圧力が大きいほど増加する。(2)液流速が0.5m/sから2.3m/sまで増加すると、空気泡の成長率は約4倍増大する。(3)空気キャビティは、約2.4mm/sの速度で成長し、その大きさの最大値は幅5mm、長さ14mm程度である。(4)発生する微細二酸化炭素気泡の直径は20〜200μmであり、その成長速度は、試験開始後0.1秒間の非常に短時間内で大きくなる。二酸化炭素気泡の成長速度は、空気泡の場合の約5〜80倍になる。
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