最近、新たな原理に基ずくマイクロマシン用動力源の開発・マイクロ化により発生する流体物理現象の解明が重要課題として認識されてきた。これまでの研究によれば、表裏で可視光吸収率の異なるロータを有する光マイクロエンジンは気体分子の集団移動現象によりロータは回転しているが、その発生したトルクは非常に微少である。したがって、マイクロ化により固体表面同士の接触により生ずる摩擦などはせっかく発生させた駆動トルクの損失を増大させているので極力少なくさせることが重要であることが明らかにされている。そこで、本研究では顕微鏡付レーザ光マイクロエンジンを創製し、希薄気体効果と量子効果を応用したエンジン特性を実験的に明らかにすることを目的とする。 本研究ではまず、幾何光学理論を用いてレーザ捕捉が可能なレーザ焦点位置を明らかにした。さらに主要研究設備備品である顕微鏡付レーザ光マイクロエンジンを設計制作した。レーザの集光には落射型蛍光顕微鏡を用いた。レーザ光はビームエクスパンダで広げた後、顕微鏡光学系で集光して、回転ロータに対して横から入射させる。戻ってくるレーザ光はダイクロイックミラとフィルタでカットし、同時に横から照明光を照射し回転ロータを同じ顕微鏡光学系で観察することができる構造にした。回転ロータやレーザ光位置決めは、回転ロータなどをのせたステージを移動させて行う。直径5ミクロンおよび10ミクロンのロータボス部分はポリスチレンラテックスを用いた。514.5nm波長のアルゴンイオンレーザなどは現有設備を用いた。回転ロータが設置されている微小ガラスボックスに純粋を満たし、10ミリワット程度のレーザを照射した場合、重力にて落下する微粒子はレーザ照射によりその進行方向特にレーザ強度が大きい方向に集積されるのがビデオ観察され捕捉されたことが実証された。
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