本研究の目的は、工業的に広く使用される空間に浮遊する微粒子群燃焼の火炎伝播機構および火炎面近傍での熱輸送特性を明らかにしようとするものである。このために、まず微粒子群の例として微粉炭をとりあげ微小重力環境を利用してその火炎伝播現象を観察した。この結果、火炎伝播の形態には、(1)なめらかな火炎面を有しガスの予混合燃焼に近い形で伝播する場合、(2)火炎近くの未燃粒子が順次自着火しながら火炎伝播し不連続な火炎面を形成する場合、のあることがわかった。 この現象について、より単純化された条件で発生条件を探るため、発泡ポリスチレン球を直線状に並べその火炎伝播現象を観察した。この結果から、試料間隔が狭い場合連続的な火炎面が形成されるのに対し、試料間隔が広くなると不連続な自着火現象に支配される火炎伝播現象の現れることが確認され、発泡ポリスチレン用い微粉炭粒子群の火炎伝播現象を再現できる可能性が示された。この試料を用いて、伝播速度におよぼす酸素濃度、試料間隔、試料粒径などの影響について実験的な検討を加えた。この結果、火炎伝播速度は火炎面から未燃粒子への熱の輸送現象が重要な役割を果たしており、これが火炎面と隣接の未燃粒子の相対的な位置関係に強く影響を受けることが示唆された。 次に、火炎伝播現象は火炎面からの未燃粒子への熱輸送現象が重要なことに注目し、火炎面と未燃粒子の熱の授受、その結果生じる着火現象を数値計算に基づき検討した。この結果、未燃粒子の着火形態には、以下の3つの可能性、すなわち(1)放出された揮発分が火炎面に接触し燃焼する場合、(2)熱源からの熱伝導により放出された揮発分が自着火する場合、(3)試料表面が着火源となって着火する場合、が指摘された。このうち、(1)、(2)の生じる可能性が高く、これが先の微粉炭の火炎伝播実験でも現れた2つの形態に対応するものと考えられた。
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