研究概要 |
本年度は,気流温度650K,気流速度40m/sまで条件設定が可能な高温風洞内で,比較的容易に微細噴霧が得られる半内部混合式の同軸気流噴射弁によって水を噴霧し,高温気流内での水噴霧の蒸発性を調べた。さらに,数値シミュレーションにより高温気流内での噴霧粒子の挙動ならびに蒸発率の変化を計算した。 まず,静止大気中で水を噴霧し気流噴射弁の噴霧特性を測定した。粒子径の測定結果によれば,微粒化用空気流量を増大すると粒子径は減少し,水流量を増大すると粒子径は増大して,典型的な気流噴射弁の噴霧特性の傾向を示すことが明らかとなった。蒸発実験範囲内での噴霧粒子のザウタ-平均粒径は40〜70μmであった。 次に,高温風洞内で水を噴霧し,噴霧粒子の蒸発率を測定した。蒸発率の測定にはスピルオーバ法を用いた。風洞断面内での,噴霧粒子と水蒸気を合わせた質量の流束分布は,上流では中心部で高く風洞壁に近づくにつれ減少する分布を示すが,下流に行くにつれて分布が平均化することが分かった。水の供給流量が増大するほど,気流速度が増大するほど,また微粒化用空気流量が少なくなるほど,噴霧粒子および水蒸気の半径方向への拡散が相対的に減少することが分かった。蒸発率については,実験範囲内でほぼ全ての条件で70%以上となって,噴霧の観察結果に比べてかなり大きな値を示しており,スピルオーバ法による蒸発率の測定は今後改良の余地があると思われた。 さらに,高温風洞内での噴霧粒子挙動の数値シミュレーションを行った。計算結果によれば,下流に行くほど,気流温度が高くなるほど蒸発率が高くなることが分かった。また,気流速度が大きくなるほど,微粒化用空気流量が多くなるほど,蒸発率はやや減少することが分かった。一方,断面内での気流温度分布の計算結果は実験結果と異なっており,今後検討の余地があることが明らかとなった。
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