プール及び液滴衝突沸騰系で発生する気泡及び液滴の飛散現象(微細化現象)は以前からその存在があきらかにされてはいたが、両沸騰系での微細化特性のメカニズムについて、その類似点と相違点が評価され、両沸騰系を通して、ある統一的なメカニズムとして把握されるまでには至っていない。 そこで本研究は平成7年度において、主として両沸騰系の微細化沸騰時について、固液接触頻度、沸騰特性曲線、蒸気泡の成長から離脱・消滅までの体積変化及び液滴の飛散の激しさの度合いを定量し、両沸騰系の微細化のメカニズムを統一的に把握し、微細化沸騰が高熱負荷除去に寄与できることを以下の結論を得、明らかにした。1.プール及び液滴両沸騰系において、180〜21°Cの加熱面温度は微細化を発生させるに必要なしきい値温度であり両沸騰系でほぼ同一の温度範囲を示す。2.プール及び液滴沸騰系において、固液接触頻度の増大とともに熱流束は増大する。3.プール沸騰系の気泡の微細化は系の圧力状態下にある飽和蒸気泡が瞬時に凝縮・消滅する現象であって、凝縮後に残る微小気泡は熱的にも力学的にも安定化した状態となった浮遊気泡である。4.液滴の微細化はサブク-ル状態下での間欠的固液接触による瞬時の微小気泡の発生とその個々の気泡の液滴中への貫通によってもたらされる液滴表面からの液粒子のひきずり飛散である。 平成8年度は溶融液の瞬時微細化凝固機構との関連性をも把握するため、液、液沸騰系での熱伝達特性を調べた。その結果、溶融液は微細化はするものの、前年度で得た所定の接触熱面温度とサブク-ル度が確保されていなかったために高い熱流束を得ることはできなかった。このことから、固液接触のみならず液・液接触においても高い熱流束の得られる微細化現象の発生には所定の接触熱面温度とサブク-ル度がしきい値となっていることが判明した。
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