燃焼の基礎研究として火災に対する自然対流の影響を調べるために、地球上よりも大きな重力加速度を人工的に作り出せる遠心式の加速装置(最大15G)を用いて様々な大きさの重力場において火災形態を調べた。特に、重力場の大きさが火災形態に及ぼす影響を調べるとともに、火災の浮き上がりや吹き消えなどの火災安定性の特性を詳細に調べた。これにより主に以下の結果を得た。 (1)ガス拡散火災の安定性に及ぼす過重力場の影響 既存の遠心式加速装置を用いて地球上の重力場(1G)から過重力場(最高15G)までの重力環境で火災形状の変化を調べた。これによって、重力加速度が増加すると火災長さが短くなり、火災基部の青炎部分が伸びることが確認できた。このことから重力場の増加が火炎内への空気導入量を増加させていることが考えられた。また、重力加速度が増大すると火災の振動が観察されるようになり、さらに増加すると吹き消えが生じることがわかった。一般に、重力加速度の増加が火災を不安定にすることが確認できた。 (2)燃料噴出ノズル内流れと火炎形態の関連 燃料の噴出レイノルズ数と火炎形態を比較した結果、通常重力場ではノズル内流れが乱流化すると火炎も乱流火炎に移行したが、過重力場ではノズル内流れが層流でも火炎が乱流化することが確認された。これは、ノズル内流れの状態だけでなく、自然対流が火炎形態に強く影響することを示している。 (3)気流中での燃焼特性との比較 過重力場の燃焼では、火炎の形成に伴って自然対流が強くなり、火炎の安定性が悪化することが予備実験で判明している。このような安定性の悪化のメカニズムをより詳細に検討するために、気流中での火炎の安定性を調べ、過重力場の結果と比較検討した。その結果、気流速度の増大に伴う火炎形態や火炎長さの変化が重力場の大きさを増大させた場合と類似していることがわかった。
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