相変化物質の固相がその融点より高い温度の伝熱面に押しつけられて、薄い液膜層を形成しながら溶融する、いわゆる接触溶融現象に関連して、現象の非定常性、不安定性、相変化面近傍の伝熱面内の熱伝導と相変化の相互効果など、従来、見過ごされてきた要因を基礎的に研究した。主な研究成果を以下に示す。 1.不安定性が高く、かつ、高い測定精度を要するために、従来測定が困難であるとされてきた低ステファン数の範囲について、押しつけ面圧、ステファン数、溶融速度の関係を測定により求め、閉塞現象に代表される溶融速度低下現象を検討した。 2.伝熱面内部の熱伝導現象を考慮した非定常接触溶融現象の数値解析を行った。先ず、伝熱面上面熱流束一定の条件、伝熱面下面熱流束一定の条件、伝熱面下面で一定温度の流体と熱伝達で熱が付与される条件をそれぞれ設定し、非定常接触溶融現象における無次元支配パラメターを抽出した。次いで、各無次元パラメターを広範囲に変化させる数値計算を行い、各パラメターの変化が定常熱流束および収束時間に及ぼす影響をまとめた。 3.押しつけ荷重に片寄りがある場合の非定常接触溶融現象を実験的に検討した。様々な荷重条件の元での、押しつけ面圧、ステファン数、溶融速度の関係を測定により求めるとともに、溶融面と伝熱面の間に形成される薄い液層内の流れを観察し、荷重の片寄りに起因する流れの片寄りと溶融速度の片寄りの関係を明らかにした。
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