研究概要 |
NOx生成量に対する空気温度の影響はしばしば研究されてきたが,その温度上昇範囲はせいぜい500℃程度で,それ以上の温度上昇の影響については未知であった.最近開発されたハイサイクル切換バ-ナを備えた加熱炉では800〜1000℃の空気予熱が行われており,その場合に従来の知見よりはるかに低いNOxレベルが観測されている.このような高温空気予熱燃焼では,火炎構造や燃焼機構が既存の知見からは説明がつかないことが予想され,本研究ではこれらの点を明らかにすることを目的とした. 1)交互切り換え式バ-ナと蓄熱器を2組組み合わせることにより,空気流の温度を1000℃上昇できる実験装置を製作した.この装置を用いて発生した高温空気流に窒素ガスを混合することにより,空気流の温度と酸素濃度を独立に変化させ,NOx排出量に対する温度と酸素濃度の影響を明らかにした. 2)燃焼室内へ供給する燃料の噴射位置を変え,燃料噴流の混合と燃焼過程を高速度ビデオカメラを用いて観察したところ,拡散火炎が形成される場合には,高温のため通常の拡散火炎よりはるかに高輝度となり,この場合のNOx排出量は高濃度となる.しかし混合される燃料が広い範囲に分散する場合には,輝度の低いぼやけた反応領域が形成され,この場合NOx排出量は著しく減少する. 3)反応動力学計算を用いてNOx排出量の予測を行い,予熱温度,既熱ガスによる希釈効果などの影響を調べた結果,単純に空気温度が上昇した燃焼では,NOx排出量は指数関数的に増加してしまう.しかし,既熱ガスの混入や窒素の混入による酸素濃度の低下は,同時に燃焼温度の低下も伴うので,NOx排出量の低減に著しく効果を示す.さらに,混入する既熱ガス中に高濃度のNOxが含まれる場合には,その分解反応が生じることが明らかになった.
|