研究概要 |
界面活性物質の溶液表面における吸着現象を系に他物質を添加することなく実時間で二次元的に可視化・解析するための新しい光学的手法及び測定装置の開発を行った. 1.光学系の製作 拡大平行化したレーザー光を偏光状態を制御して溶液表面にブルースター角にて入射させ,反射光をビデオ画像として記録した後,デジタル画像解析を行うことにより,界面活性物質の分子構造とその水溶液表面での吸着状態及び照射光に対する光学的応答の相関を調べる方法を採用した.また,照射光の波長を可変にできるように白色光源と波長選択フィルターを用いた光学系を組み込んだ.この可視化・解析法に基づき,溶液表面に形成される分子集合体構造の光学的応答が次の3通りのモードに分類された.(1)低濃度から溶液表面に形成される液体凝縮膜の前駆体的な分子集合体構造が照射光を散乱し,p偏光成分のみの高輝度の反射像を形成する.(2)液面に存在する溶質の吸着膜が,入射光の反射に際してpおよびs偏光成分間に振幅反射率の差異と位相シフト量の差異を生じさせることにより,吸着状態を反映する反射像を形成する.(3)高吸着密度の液体凝縮膜内での局所的な相転移により生成した二次元微結晶や,液体凝縮膜が破断することにより形成された離散的な分子集合体構造が,その空間的な密度ゆらぎのために照射光を強く散乱して高輝度の反射像を形成する. 2.アルコール水溶液系に関する実験及び可視化画像の定量的解析 上記の可視化・解析法を14種類の直鎖アルコール水溶液系に関して適用した実験を行った.1-pentanol水溶液系及び2-pentanol水溶液系に関して吸着状態と反射像輝度の相関の検定曲線を得た.また,1-pentanolの蒸発を伴う1-pentanol水溶液系において,低濃度から溶解度以上までの各溶液濃度での特徴的な表面吸着状態の時空間変化が可視化され,この画像に関する実時間吸着密度マップを作製した.さらに,壁面加熱により外部から温度差を付与した実験において,低温側液面での液体凝縮膜の破断によるクラスター構造の形成等が可視化された.
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