メタノールやエタノールを高濃度で含む高濃度アルコール混合燃料は、ガソリン等の代替燃料として期待されているが、主成分となるアルコールが常温の空気中で蒸気圧の関係から液面に接する可燃範囲の混合気層を形成する特性を持つため、その貯蔵や輸送中において爆発事故が発生する危険性があり、爆発現象に関する十分な知識にもとづいた安全対策を講じておく必要がある。本研究では、初年度である平成7年度は、底面に拡がった液面から蒸発した燃料による爆発現象を観察するための燃焼容器(爆発容器)を制作し、代表的な組み合わせであるメタノールとガソリン(ホワイトガソリン)の混合燃料の液面上方に形成される可燃性混合気層に電気火花放電で着火した場合について、メタノール含有率(体積比)が95〜100%の範囲内で実験を実施した。実験では、系の温度、蒸発開始から着火までの時間、着火用電極位置の液面からの高さを変え、ガソリン含有率が着火の成否、火災挙動、圧力変動に及ぼす影響を系統的に調べた。着火の成否、最大圧力上昇値の等値線分布を着火位置と蒸発時間でマッピングした結果、約30℃を超える温度では5%程度の低いガソリン含有率でも蒸気圧の高いガソリンの添加の効果によって着火する範囲が縮小さらに最大圧力上昇値も全範囲で低下すること、逆に20℃よりも低い温度範囲では5%程度のガソリン含有率では着火の危険性、最大圧力上昇値とも増大する傾向があることが明らかとなった。平成8年度は、よりガソリンの含有率の高い条件等について実験を行い、火炎挙動と圧力変動の対応関係を広範囲にわたって解析し、効果的な安全対策に必要な基礎知識をまとめる予定である。
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