1)まず本実験に先立ち、超音波CTに適したアルゴリズムを調べるため、代表的なCTアルゴリズムである。フィルター補正逆投影法、フーリエ変換法、逐次近似法について、既知の断面をもった原画像について計算機シミュレーションを行ったところ、逐次近似法が原画像に対して最もよい類似度の再構成画像を与えることがわかった。次に、計算と同じ形状の疑似生体(ファントム)を寒天で作り、それを水中に沈め、超音波CT法で断層像を求めたところ、やはり逐次近似法によって最もよい類似度が得られたが、計算時間はフィルター補正逆投影法が最も短く、より実用的であることがわかった。 2)これまでの実験により水中音速と温度の関係式は求まっている。また、均質な物体であれば超音波CT法で求めた加熱前と加熱後の音速分布の差をとることにより、温度分布を得ることができることはこれまでの実験で分かっている。しかし、実際の生体は均質でない。そこで本実験では均質でない物体でも温度分布を測定できるかどうかを主眼に実験を行った。まず、水分含有率の多い筋肉と臓器というように比較的組織の差が小さい場合を調べるため、大小いくつかの穴を開けたファントムについて実験を行った。穴の一つにはヒーターが入れてある。まずヒーターを加熱していない時に測定を行い次にヒーターを加熱して測定する。得られたそれぞれの音速投影データを再構成することにより、二つの音速分布像を得ることができる。その二つの音速分布像の各点における音速差を温度差に変換して温度分布像を得ることができた。差をとることにより、組織の違いによる音速差は相殺され、温度差のみが表れることがわかった。0.1℃の温度差を検知できる。 3)生体中に骨やガスなどがある場合は、超音波を通さないため音速投影データに欠落が生じる。ファントム中に金属棒を埋め込んでそういう場合の実験を行った。その結果、欠落部分があまり大きいと温度分布測定は行えないが、小さければ欠落部分のデータを修正することによりある程度の測定は行えることがわかった。
|