研究概要 |
縮小模型鉄道車輪軸の転走実験で得られたカオス振動データを最大リアプノフ指数によって分析評価した結果から,カオス挙動に関与する運動自由度が3ないし4であることを示した.そのなかで,左右動とヨ-の2つの自由度だけでなく,ロールも寄与することを確認した.ロールに関しては,フランジ接触の際,接触側の車輪がレールから離れるだけでなく,非接触側の車輪も飛び上がる場合のあることが画像データによって確認された. 実験で観測されるカオス振動波形の特徴は,速度とともに増加する「振れ戻り」の現象であるが,従来から用いられてきた「踏面1点接触+フランジ反力」モデルのままでは,「振れ戻り」現象をシミュレーションで模擬することはできない.実態を模擬するには,踏面部およびフランジ部の摩擦係数と踏面有効勾配を測度ごとに大きく調整することのほか,踏面部とフランジ部の荷重分担を考慮することが必要性となることを明示した.なお,「振れ戻り」現象にはフランジ摩擦力が強く関係しており,その作用方向が従来考えられてきたのとは反対になる場合のあることが実験波形からも確認された. 以上のことから,測度に依存する切替えパラメータとしてフランジ反力を仮定し、フランジに作用する前向きの摩擦力と後ろ向きの力を適宜切り替えることにより,上記の調整を行うことなくシミュレーション波形を実態に近づけられることを明示した.また,この改善モデルを用いて,カオス状振動時の発生横圧を推定した結果,「振れ戻り」の際の横圧が静止輪重の2〜3倍に達する場合のあることを示した.なお,不安定化後の走行安全性について合理的な評価のために,今後は輪重の変動を考慮するとともに,本研究が対象とした車輪軸単体ではなく,台車さらには車両規模へ解析モデルを拡張することが必要である.
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