研究概要 |
放電加工システムにおいては加工材料の溶融・蒸発に伴って,材料の占める空間領域が時間と共に変化し,さらに材料の変形には物理的高速条件が課せられる場合が多い.従って,放電加工システムは拘束条件を持つ自由境界問題として取り扱う必要がある.そこで,拘束条件を考慮した自由境界問題の観点から放電加工システムの数学モデルを以下の手順で構成し,その定性的,定量的妥当性を検証し,さらにその温度分布の推定法を考察した. (1)熱弾性特性を考慮して加工材料内部の温度分布を支配する熱伝導方程式を導出した. (2)加工材料内に含まれる不純物の影響を考慮して,確率的要素を持った熱伝導方程式を導出した。 (3)放電加工により材料が変形し,さらに溶融・蒸発するため材料の変位に拘束条件を課し,溶融表面を自由境界として,自由境界の挙動を支配する条件を導出し,モデル化を行った. (4)構成した数学モデルの数学的妥当性,則ちシステム方程式の一意解の存在条件を明らかにした. (5)シミュレーション実験により,構成したモデルの定量的妥当性を検証した. (6)加工材量内部の温度分布を推定するシステムを構成した. 【研究によって得られた新たな知見】 (1)放電加工システムの数学モデルは変位に関する拘束条件を考慮する必要があり,かつ自由境界を持つため拘束条件をもつ自由境界問題として捉える必要があることが明らかになり,そのモデルは変分不等式によりモデル化されることが明らかになった. (2)拘束条件も変分不等式としてモデル化可能であることが示された. (3)本研究において構成した温度分布推定システムを用いることにより,加工を行う前にどのように材料が変形し,かつどのような応力を受けるかを知ることが可能となった.
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