本年度は、理論的研究として線維束で補強された超3単性体の有限要素解析、実験的研究として光3単性皮膜法を用いた膝靭帯のひずみ分布測定実験の双方を実施した。 まず、理論解析では、膝十字靭帯をMooney-Rivlin材を基質とし、これにコラーゲン線維が配行している複合体のひずみエネルギー関数を導出し、次いで有限要素法を用いて膝屈曲に伴う靭帯の形状変形と応力分布を求めた。 次に、実験研究では次の3種類の測定実験を行った。 (1)透明膝モデルによる実験:大腿・脛骨部を透明エポキシ樹脂、靭帯部をシリコンゴムで代替した膝関節モデルを製作、ポリウレタンを皮膜剤に用いて、光3単性法により、モデル靭帯の変形とひずみ分布を同時に測定した。 (2)動物・生体靭帯への皮膜法の適用試験:ヒト腸脛靭帯切片に光3単性皮膜剤を塗布し、皮膜剤が靭帯張力特性に及ぼす影響、皮膜剤のひずみ追従性、靭帯への接着性などを検定した。また、日本白色家兎の側副靭帯に皮膜剤を塗布し、引張り試験で靭帯全体のひずみ分布を光3単性縞で計測した。 (3)ヒト膝靭帯でのin-Uitro実験:膝の3次元運動を計測・再現し得るシミュレータ・ジグを使用し、まず、膝の3次元運動を計測した。次に膝の大腿骨顆を切除し、靭帯を露呈した上で、上記ジグにより、膝の3次元運動を再現しつつ、膝屈曲に伴う靭帯形状変形の観察と、光3単性法によるひずみ分布の測定を同時に行った。
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