ウラン濃縮用や生物科学用の遠心分離機のような液体を部分的に封入した同心円柱空洞を有するオーバーハング軸の動的安定性について調べた。このような液体を内蔵する中空回転軸は回転数が空の軸の固有振動数と液体波動の固有振動数との和にほぼ等しくなる回転数域で不安定となり、しばしば激しい自励振動を引き起こす。オーバーハング軸はパラレルモードとコニカルモードが連成した振れ回りをするから、2次元波動と3次元波動のいずれによっても不安定化される。しかもオーバーハング軸はジャイロ効果のために剛体ロータでも4ヶの固有振動数を持つから、ロータと液体波動を色々な組合わせによる不安定領域が多数存在する危険性が懸念される。 今年度はこの現象の基本的な特性に的を絞り、主に不安定性に対するジャイロ効果の影響について調べた。理論解析ではロータの前進および後進歳差の微小なふれまわりを仮定し、この運動によって励起されるロータ空洞内の液体波動を微小な線形3次元波動として求め、空洞壁での液体圧力を積分してロータに作用する液体の力および偶力を計算した。得られた液体力や偶力をロータの運動方程式に代入して、液体を含めた系全体の振動数方程式を求め、系の安定性はこの振動数方程式が共役な複素根を持つか否かで判別した。 その結果、液体波動によって不安定されるのは前進歳差の振れ回りだけであること、特に2次の前進歳差の固有振動数は高回転数域で回転数に比例的に増加するから、ローターの慣性モーメント比によっては高回転域で不安定域が非常に広くなる危険性があることなどが明らかになった。理論計算の結果は実験によって験証した。
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