研究概要 |
平成7年度に引き続き,ウラン濃縮用や生物科学用の遠心分離機のように液体で部分的または完全に満たされた同心円柱空洞を,オーバーハング軸に取り付けた場合の動的安定性と自励振動防止対策に関する理論的,実験的な研究を行った.このような液体を内蔵する中空回転軸は回転数が,空の軸の固有振動数と液体波動の固有振動数との和にほぼ等しくなる回転数域で不安定となり,しばしば激しい自励振動を引き起こすことが知られている. 今年度は特に,慣性モーメント比,空洞寸法比などの主要パラメータの系の安定性に関する効果に主眼を置いた.理論的には前年度構築した,並進運動・回転運動が連成運動し,さらにジャイロモーメントを考慮した系の取扱い手法に踏襲した.これはロータの前進および後進歳差の微小なふれまわりを仮定し,この運動によって励起されるロータ空洞内の液体波動を微小な線形3次元波動として求め,空洞壁での液体圧力を積分してロータに作用する液体の力および偶力を計算した.そして得られた液体力や偶力をロータの運動方程式に代入して,液体を含めた系全体の振動数方程式を求め,系の安定性はこの振動数方程式が共役な複素根を持つか否かで判別した.一方,理論計算の結果は,この解析方法に基づいた不安定予測プログラムを用いて,不安定が起きると予測される慣性モーメント比の異なる2種類のロータを製作し,また実験時には内蔵する液体の充填率を色々と変えた実験によって験証した. その結果,ロータの慣性モーメント比と液体の固有振動数比の和が1となる系において自励振動は限りなく続くという結論を導いた.
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