本研究は、ニューラルネットワークを多層に立体的に配置したキュービックニューラルネットワークを応用して、多次元の情報処理を行う知的制御手法の確立を目指した。このキュービックニューラルネットワークにおいては、情報の次元が低いレベルに対しては定量的な情報処理を行い、高いレベルに対しては定性的な情報処理を行うことによって、定量的な情報処理の前提が何らかの原因によって崩れたような状況でも定性的な判断によって情報処理を行うことができるようにした。定量的な制御と定性的な制御の切り換えを自律的に行うために定量的な制御器の評価器を作成し、そのパラメータを遺伝的にアルゴリズムで最適化した。定性的な制御系については、定量的な制御器の情報処理をファジィニューラルネットワークによって定性化する方法を提案した。提案した知的制御手法の有効性を確認するために、まずセンサー異常を起こす倒立振り子の制御系を製作し、本手法を適用した。安定化のための定量的な制御は最適制御理論によって作成し、これを2段階に抽象化して定性的な制御器を作成した。実験の結果、最適制御では角度センサーの増幅度が平常時の3割減で不安定になるにも拘わらず、本手法では平常時の10分1になっても安定することが示された。さらに、振り子の振り上げから倒立に至る制御に本手法を応用した。振り上げの定量的な制御は極配置理論から作成し、これを抽象化して定性的な制御器を作成した。初期条件から振り上げ、倒立を行う実験を行った結果、本手法はあらゆる初期条件から振り上げから倒立に至る制御が可能で、他の手法に比較して短時間で倒立に至ることが示された。このような実験を通して、本手法の有効性を明らかにした。
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