機械システムおよびこれを操作する人間の線形・非線形力学系の制御時の動作状況が、操作制御情報伝達の遅延および劣化によっていかに変化するかを検討した。 まず、ばね・質量・ダンピングからなる1自由度の機械力学系で基礎に変位加振を加えるシステムでモデル規範追従制御を行う場合に、制御規範モデルから求めた適切な運動指令情報に時間的な遅延、あるいは制御変位振幅の大きさの減少など劣化が生じた場合、結果の応答がいかに変化するかを検討した。また、人間の上肢運動を2リンクのアームとしてモデル化し、このモデルを用いて正常な運動を実現するアクチュエータの制御信号に時間の遅延と信号振幅の劣化が生じた場合、アーム先端のエンドイフェクタの直線運動、回転運動、S字運動、クランク運動などの軌道制御精度にいかに影響するかを検討した。この結果、たとえば±10%の変化に対して最大40%以上の軌道誤差あるいは終端精度誤差が生じうることを示した。 以上の基本的な機械力学系ほモデル規範追従制御、2リンクの上肢モデルを用いた内部トルク制御情報の遅延・劣化の影響の検討つづき、さらに複雑なダイナミックス、具体的には人間の静的歩行時における歩行の安定性がその関節制御情報に劣化・遅延が生じる場合にいかなる影響を受けるかについて検討した。人間の静的歩行の歩行状態、特に歩行時の各関節の時間的な動きを実測し、これをもとに関節制御情報の基準パターンを作成した。静的歩行に関する数式モデルの作成、重心の3次元位置をもとにした歩行安定性の判定法、基準パターンを用いたシュミレーションによる歩行安定性を検討し、静的歩行時の各関節の角度制御情報に周期、振幅のわずかな変化が生じた場合に、全体の歩行安定性がいかに変化するか、情報の変化と応答の変化とを対比して検討した。
|