研究概要 |
本研究では,研究代表者らによって開発されてきた伝達影響係数法の計算過程に部分構造合成法的な取り扱いを導入することによって,これまでに明らかになった伝達影響係数法の種々の特長を損なうことなく,計算能率と適用対象の両面でより一層の性能向上を実現させた伝達剛性係数法を新たに開発した.平成8年度は,伝達剛性係数法について次のような知見を得た. 1.従来の伝達影響係数法では取り扱いが不可能であった閉ループを含む系の典型例として,複数のはり要素から構成されるラーメン構造物に伝達剛性係数法を適用し,線形自由振動および線形強制振動解析アルゴリズムを定式化した.平成8年度は直列型3次元ラーメン構造物の縦・曲げ・ねじり連成振動を取り扱い,伝達マトリックス法と比較して,処理速度やメモリ量に関する伝達剛性係数法の優位性を実証した.このような実績を踏まえて,今後はトラス構造物への適用を図る予定である. 2.局所的に非線形性が存在する大規模構造物の非線形強制振動を解析するために,調和バランス法と伝達剛性係数法を増分法の概念を介して融合した増分伝達剛性係数法を提案した.これを,配管系や回転体に見られるような非線形支持要素を有する直線状はり構造物の強制振動解析に適用し,面内曲げ非線形強制振動解析アルゴリズムを定式化した.増分伝達剛性係数法では,構造物を線形はり要素と非線形基礎支持要素とに分離した上で,反復計算過程から線形はり要素内部の自由度を完全に除去することが最大の特長であり,従来の増分伝達マトリックス法や増分伝達影響係数法と比較して,処理速度やメモリ量に関する劇的な性能向上を実現できた.今後の課題は,より複雑な構造物への適用を図ること,および能率的な安定判別法を開発することである.
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