研究概要 |
静電気力で駆動するマイクロアクチュエータの開発を重点的に行った.アクチュエータは,固定板の上に絶縁膜をはさんで弾性板が反り上がった構造をしている.固定板と弾性板の間にある閾値以上の電圧を加えると弾性板は静電力により固定板の方向にたわみ,吸い付けられる.このとき,弾性板が固定板に接しようとする点には非常に小さいギャップができており大きな静電力が生じる.そして,この部分が弾性板の変形と共に移動していくことによって,結果として大きな変形が得られる.弾性変形を利用しているので,微小世界で支配的となるクーロン摩擦を避け,効率的な動作が実現される.弾性板はアルミニウム薄膜とニッケル薄膜を張り合わせた構造をしており,寸法は長さ:0.3mm,幅:0.02mm,厚さ:0.001mm程度であり,半導体技術を利用して製作される.アクチュエータの閾電圧や変位量などの特性は弾性板の初期曲率で決まるが,この曲率をアルミニウムとニッケルの膜厚比を変えることによって調節することが可能であり,このことを実験により証明した.さらに,このアクチュエータを複数組み合わせることにより,多自由度の動きをするアクチュエータの構成を提案した.これにより3次元的な動きをするマイクロロボットの脚などに発展させられる見通しがついた.また,この手法を利用することにより3次元的に複雑なマイクロ構造物をハンドリング無しで製作できる可能性があり,再現性のよい作品が大量に簡単に製作でき,これが実験の容易さにつながっていくものと思われる.来年度はこのアクチュエータに太陽電池を組み合わせ,光エネルギを利用した静電マイクロアクチュエータの駆動に関して研究する.
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