研究概要 |
昨年度までの成果を継承し,大規模・複雑化の進むプラント運転における意思決定支援技術として、個々のオペレータの有する概念知識と意思決定の相互共有の促進を実現する技術について研究を行なった.すなわち「曖昧な概念」を,多面的・多階層(抽象度のマルチレベル)の構造(冗長性)を有する概念として,オペレーションデータや対象システムの履歴データからのコンピュータによる自動生成とビジュアライゼーション(概念の顕在化)技術の確立を核として以下のような研究を行なった. 1)進化型計算によるユーザ挙動の観察に基づく概念の洗練化 ユーザの挙動を観察するなかから人間の認識やシステムの状態に適合した形での情報の選別や発見を行なう動的概念形成システムを提案を行なった.この手法は,必要情報を非関連情報から選別しながら概念を形成することのできる属性選別機能を付加した概念形成手法と既存の属性集合から構成的(constructive)により効率的なタスク解決に有効に働く新たな情報を発見する遺伝的アルゴリズムを用いた新属性創出アルゴリズムを用いた新属性創出アルゴリズムからなる.さらに,実環境として,プラントッペレーション環境を取り上げ,この動的概念形成手法を使った知的支援について検討を行なった. 2)プラントオペレータの時系列状態概念の帰納的生成と資源制約下推論 教師なし帰納学習手法として知られる概念クラスタリングの手法を,教師データとして与えられたプラントで観測される多数のプロセス変数の時系列データに対して適用し,プラント状態の概念カテゴリの自動生成を試みた.すなわち入力となる教師データとして時間に伴う各種変数の変化量や変化方向によって離散化された状態記述の系列を用い,これらの教師データから類似の複数の状態からこれらを包含する一般記述としての状態概念,ならびにこれら状態概念の間の遷移パターンを帰納的に学習して,プラントの故障に対応する概念カテゴリを,多面的・多階層(抽象度のマルチレベル)の構造を有した概念として生成することを可能にした.さらにこれに基づき応答までの時間制約が存在する下でのオペレータへの情報提示を管理するための資源制約下推論の定式化を行なった.
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