人間とロボットが空間や感覚を共有し一体となって作業を遂行するためには、人間に対する安全性が第一に要求される。空気圧ゴム人工筋マニピュレータは、人間に対する安全性の確保には最適であるが、空気の圧縮性による圧力応答の遅れや構造的な減衰性能不足のため、高度で複雑な運動制御に適用することは容易でない。 本研究では、このような問題を解決するため、電気粘性(ER)流体を用いた減衰力可変ダンパ(ERダンパ)を試作し、これをマニピュレータの関節部に装着して制御性能の向上を図った。試作したERダンパは電気信号によって高速に減衰力を調整することが可能であり、これによりマニピュレータの減速制御を効率的に実施できることが明らかになった。電空制御弁を用いた空気圧サーボによるアクティブ制御とERダンパの減衰力を関節角速度にもとづいて調整するセミアクティブ制御を組み合わせたハイブリッド形制御を実施することにより制御系の速応性と安定性が両立できる。その結果、より複雑な軌道への追従制御が可能となり、マニピュレータの機能が大幅に向上する。 今後、さらに効率的なハイブリッド形制御手法について検討する。また、得られた結果を2自由度マニピュレータにより構成される上肢筋肉の機能回復訓練用リハビリテーション支援ロボットに適用する。本研究を通して、人間共棲型ロボットに要求される基本概念と、その実現についてより深く考察する。
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