研究概要 |
1.減圧気相堆積法(LP-CVD法)によって作製した窒化珪素薄膜を光リソグラフィを用いて片持ち梁(三角形,四角形)に成形した.この薄膜の厚さ・品質をエリプソメータを用いて測定・検査し,屈折率から正常な膜が生成されているか否かを判定した. 2.矩形波状のレーザー光の照射熱によって梁を加振する装置および振動変位の周波数応答を測定する装置を作製した.レーザー照射径や照射強度分布は本研究補助金によって購入したレーザースキャンアナライザーによって計測し,周波数応答の定量的な評価ができるようにした. 3.梁の熱加振による振動特性を数値計算によって求めた.その結果,振動変位は熱励振周波数の増大とともに減少するが,固有振動数に近づくと増大に転じ,固有振動数で鋭い極大値を示す.この励振振動数を低振動数から固有振動数に近づくまで変えたときに見られる振動変位の漸減は熱励起振動の特徴としてとらえられる. 4.形状・寸法の異なる梁を作り,加振実験によって梁の周波数応答を計測し,求められた固有振動数から,梁のヤング率を算出した.また,他の所で製作した膜を同じ条件で片持ち梁に成形し,そのヤング率も比較のため測定した. 5.梁の変位の周波数応答は定性的には数値計算から予想される3.の結果と一致した.ただし,定量的に検証するためには熱定数の同定が必要である. 6.ヤング率は薄膜の生成条件と梁形状の製作条件の適否によって大幅に変わることが明らかになった.すなわち,屈折率が小さい薄膜のヤング率は低い値を示すこと,また,同じ屈折率を持つ薄膜を用いても,梁形状を製作するときの条件でヤング率が簡単に半分に落ちることなどがわかった.
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