PID位置制御型コントローラを有する複数台の産業用ロボットで大型物体の操りを実現するため、平成8年度は、平成7年度に試作した4つの受動関節から構成される機構を2台の産業用ロボットの先端に導入し、把持物体の最適な操り方法を検討し、実現した。2台のロボットによる協調の場合、両方のロボット先端の間に導入された8個の受動関節のうち2つの関節をロックすることが必要となる。この2つの関節の最適な選び方として、受動関節機構の特異姿勢からの距離を評価関数に設定することにより、2台のロボットに発生する相対位置誤差にロバストな協調系の実現を目指した。まず、本手法を動的に適用した場合の協調搬送と、評価関数を利用せず、ある特定の2関節のみを固定し続けた場合の搬送シミュレーションを行った。その結果、場合によっては、評価関数を利用して固定する受動関節を動的に切り替える場合よりも、特定の2関節を固定し続けた方が評価関数自体の値が大きくなることが明らかとなった。これは、動的切り替えが局所的な最適性のみを追求するためであると考えられる。しかし、搬送距離が長くなった場合には、固定する関節を変えない場合には特異姿勢近傍を通過しやすくなることも明らかとなり、本アルゴリズムの優位性が示された。実機による検証実験では、固定する受動関節を切り替える際、全ての関節がフリーとなる瞬間が存在すると関節角変位が目標値からずれることがわかり、切り替えのタイミングが系の性能に影響を及ぼすことが明らかとなった。
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