研究概要 |
ロボットがヒト並の知的な作業を行う上で有効な触覚センサを開発することを目的として,前年度に引き続き光導波形触覚センサの高機能化と高精度化を行った.本年度は,触覚センサ搭載マニピュレータを使用して表面性状を知覚する実験を行った.さらに,ヒトに対して別途実施した心理物理実験の結果から,表面性状を知覚するための神経回路モデルを定式化した.実験によってこのモデルが金属表面上に設けた段差の識別に有効であることを確認した.以下に本年度の主な成果をまとめる. 1.マニピュレータに搭載した触覚センサのセンシング面をそれそれ0.05,0.1,0.2mmの段差のある三枚の金属板表面と段差のない金属表面に押しつけて表面上を走査させる実験を実施した.水平力と垂直力の比から摩擦係数を計算したところ,段差のあるなしに関わらず同一の摩擦係数が得られたため,本センサは物体表面の摩擦係数を計測できることがわかった. 2.段差の位置に対応した座標値で垂直力がステップ関数状に変化する現象が認められた.ステップの幅の比を計測したところ,金属表面の段差値の比とよく一致した.したがって本触覚センサは,金属表面に設けた0.05〜0.01mmの段差を識別できる能力があることがわかった. 3.ヒトに微少段差を触れさせて弁別閾を求めたところ,触運動速度に依存せず閾値は一定値を保つことがわかった.この実験結果に基づき,空間可算と時間可算の機能を組入れた単一ニューロンのモデルを考案した.さらに有限要素法によるシミュレーション結果をこのモデルに入力して有効性を確認した. 4.触覚センサで計測した垂直力を上述のモデルに入力したところ,段差の大きさに比例してニューロンの神経発射密度が増加することがわかった.
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