研究概要 |
本年度は,シリンダ・ベローズアクチュエータの構成要素である拮抗形ベローズアクチュエータの基礎特性を明らかにした.まず,拮抗形ベローズアクチュエータのバネ力静特性及び剛性特性を実験により求めた.即ち,チャンバ内圧力差とベローズ変位には線形性があり,チャンバ内釣合圧力により固有剛性が直線的に変化することを示した.固有剛性については,理論式を導出し,数値計算結果が実験値と一致することを明らかにした.また,曲げ剛性特性についても,外力とベローズの曲げ角度に線形性を有することがわかった.位置制御性能に関しては,階層構造フィードバック制御則の有効性を実験により検証した.ここで,位置制御に関する階層構造フィードバック制御則は,目標圧力設定ループと圧力制御ループの2段階から構成されており,高次の非線形微分方程式で表わされる空気圧ダイナミクスに対して広い運動範囲での安定性と摩擦などの外乱に対するロバスト性を保証する.停止位置誤差は,各目標停止点に対し±5μmとなり,チャンバ内釣合圧力増大により,停止精度が改善されることがわかった.また,周波数応答実験を行い,チャンバ内釣合圧力増大により固有振動数が改善できることを示した.外力推定性能については,運動方程式から導出される静的外力推定式を適用することにより,外力推定分解能0.4Nなる結果が得られた.そして,静的外力推定式を用いて,動的外力の推定を行う場合の推定可能周波数領域を周波数応答実験により明らかにした.シリンダ・ベローズアクチュエータのシミュレーションプログラムは,現在構築中であり,完成後安定性について議論する.また,空気圧シリンダの摩擦特性及び粘性摩擦係数については,実験により各パラメータを同定した.シリンダのロッド部先端に拮抗形ベローズを取付けたシリンダ・ベローズアクチュエータのプロトタイプモデルが完成し,基礎特性を明らかにするための実験を行う.また,シリンダ・ベローズアクチュエータを応用した移乗機の基本コンセプトが確立し,設計製図を完了した.今後は,移乗機の製作と実験を行う予定である.
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