本研究では、これまでに当該分野では利用例のない低線量γ線の照射による絶縁物中の内部部分放電特性およびそれらに及ぼす印加電圧周波数の影響を明らかし、絶縁物中のボイド検出を試みた。実験として、模擬ボイドを含む絶縁物にγ線をナロ-ビームとしてスキャンしながら照射し、γ線がボイド位置に照射されたときの部分放電特性の変化を評価した。その結果、γ線源がボイドに近ずくにつれて放電電荷量の小さな放電が数多く発生するようになり、ボイドの中心上においてその影響が最大になった。これはγ線の電離作用によりボイド内の初期電子がより多く供給され、部分放電が容易に発生するためであると思われる。次に印加電圧の周波数に注目し実験を行った。その結果、商用周波数電圧印加時よりも低周波電圧印加時の方が部分放電特性に及ぼすγ線照射の影響をより鮮明にすることができた。商用周波数においては、先行する放電により残存した絶縁物表面の電子が次に発生する放電に影響を及ぼすため、放射線照射による放電の初期電子を供給する効果が弱体化するためと考えられた。これに対して、低周波電圧印加時には放電の間隔が長くなるため、γ線照射の効果がより顕著になるためであるとわかった。これらの結果より低周波電圧印加とγ線照射を利用すれば絶縁物中のボイド検出が可能であると考えられる。また低周波電源の利用により、電圧印加時の機器に流れる充電電流を大幅に小さくでき、装置全体の大幅な小型化・軽量化が可能となる。そしてγ線源はX線源と異なり高圧電源が不要でかつその大きさも小指の先以下であることから低周波電源との組み合わせは、現場適用性に優れた新しい絶縁物中のボイド検出技術の確立が見込まれると思われる。
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