研究概要 |
超伝導永久電流スイッチPCSが古くから開発されているが、動作速度は数秒から数分という遅いものであった。本制御整流素子は、超伝導フィルム(6〜10μm)、絶縁層(数μm)およびヒ-タフィルム(数μm)の多層構造を構成した点に特色と独創点がある。ここで特に、絶縁層には、セラミック層のコーティングを試み、熱伝導性の向上を図ることで、スイッチングの高効率化、高速化が期待できる。その結果、商用周波数動作の超伝導整流素子が出来れば、超伝導パワーエレクトロニクスの分野を拓くものであり、現在、超伝導技術の応用が考えられている分野に貢献する意義は大きい。このため、(1)蒸着法による素子作製のための装置作りを行った。(2)積層接着法による素子については、静特性を把握し、素子の冷却条件が良ければ、チャネル電流が自己回復電流以下になれば、直ちに超伝導状態に復帰することが明らかとなった。(3)抵抗負荷の半波整流、全波整流を行い、50Hzで50A,100Hzで25Aの直流出力を得た。(4)プッシュプル型全波整流回路を構成するための超伝導変圧器を試作した。(5)年度当初20μm厚のNbTiフォイルが入手できなかったので、1mm厚の材料から圧延したが、15μm厚のフォイルしか作成できなかった。替わりに8μm厚のNbフォイルを用い、厚みの異なるスイッチを作成した。現在スイッチの特性を測定しており、ほぼ計画通りに進捗している。(6)動作効率の向上のための方法として真空蒸着法による素子作成の準備を進めている。年度途中で入手した20μm厚のNbTiフォイルの切出し方法について種々検討し、レーザ加工法によって可能なことが明らかとなった。(7)素子の基礎特性や、整流特性についてまとめ、国外の研究状況と合わせて、ソウルで行われた国際パワーエレクトロニクス会議(ICPE95)において“Beginning of Superconducting Power Electronics Devices (S-PED)"と題して、発表した。
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