風力エネルギーの賦存量を求める方法として3つの方法が考えられる。第一の方法は直接計測による方法である。この方法の欠点は多点を観測するとき、計測装置の費用がかかることである。第二の方法は設置地点の3次元起伏模型を製作して風洞実験で求める方法である。この方法では風洞施設と模型の製作費用がかかることが欠点である。第三の方法は流体方程式をたてて計算機で流れを解析する方法である。しかし実用的な求解時間で計算するには時間がかかり過ぎ問題がある。そこで筆者は、デンマークのRiso国立研究所で開発されたWASPというソフトウエアを東北電力の竜飛ウインドパークに適用して実測値との検証をすすめてきた。このソフトウエアは小型の計算機で実行可能であり、3次元起伏、地表粗度、障害物などの要因を考慮してウインドパーク全体の風力エネルギーの賦存量を計算でき、極めて実用的である。しかしながら、これを実際に適用してみると、傾斜の小さい斜面では可成り実際値に近くなるものの、傾斜の大きい斜面では風速が過大評価されることが分かった。そこで著者はWASPの計算結果をニューラルネットワークで補正する方法を提案する。WASPの計算結果は、計算地点の周りの360度方向を12等分した各方位ごとの風速を与えるので、傾斜の大きい斜面では隣接方位の風速が大きく変わる。そこで隣接方位の風速の変化をニューラルネットワークに入力し、実際の風速を教師信号としてネットワークを訓練する。訓練したネットワークの重みを使用して計算した結果、WASPの計算結果をうまく補正することができ、実用的な風力エネルギーの賦存量予測ができる見通しがついた。
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