無停電電源(UPS)の並列運転時において、各UPSの周波数、位相、電圧振幅等が異なる場合、UPS相互間に循環電流(横流)が流れ、この横流により利用可能な電源容量が減少したり、UPS自体にも影響を及ぼすことが予想される。本研究では、これらの基本的な検討として、先ず2台の単相出力UPSを並列運転した場合を対象に、状態変数法を用いて各部の電圧・電流波形をシミュレートするプログラムを作成し、システム各部のパラメータを種々変化した場合のシミュレーションを行った。その結果、UPS相互間を流れる横流は、各UPSのフィルタ・パラメータが同一の場合、電源電圧の電圧差及び位相差に比例して増加し、利用可能な電源容量を減少させること、またたとえ電圧・位相が同一であってもフィルタ・パラメータが異なると振動的な横流が流れ、その大きさは各フィルタのコンデンサの容量に大きく依存することなどが判明した。さらに、理論の妥当性を検証するため、主回路のスイッチング素子としてIGBTを用いた、2台の単相PWMインバータよりなる実験装置を試作し、実験的検討も行った。その結果、例えば線形負荷に対しては、2台のUPSの電圧振幅の性10%のとき、振幅が同一の場合と比較して、必要な電源容量は、負荷を同一とすると約40%増加すること、また、位相の差が15%あると、電源容量は約50%増加することなどが検証できた。本研究で得られた成果はUPSの並列運転時の動作特性の基礎データとて有用である。
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