研究課題/領域番号 |
07650358
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研究種目 |
一般研究(C)
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
臼井 博明 東京農工大学, 工学部, 助教授 (60176667)
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研究分担者 |
渡邊 敏行 東京農工大学, 工学部, 助手 (10210923)
田中 邦明 東京農工大学, 工学部, 教務職員 (30251581)
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キーワード | イオン化蒸着 / 有機薄膜 / 質量分析 / 蒸着重合 / ビニルカルバゾール |
研究概要 |
イオン化蒸着法は有機材料の薄膜形成に用いて結晶性向上や分子配向制御などの特徴が得られるが、成膜プロセスの詳細には不明な点もあり、重合を伴う成膜などの試みも行われていない。そこで本年度はビニル系材料に着目し、ビニルカルバゾール(VCz)とNメチロールアクリルアミド(NMAA)のイオン化蒸着を行い、膜質を調べると共に、質量分析を行って膜物性との関連を検討した。 VCzの蒸着では、イオン運動エネルギーが数百eV以下の条件で作製した膜は1軸に優先結晶配向した膜が得られた。イオンエネルギーの高い条件で得た膜は、赤外スペクトルのビニル基による吸収が減少しており、重合を伴う成膜の可能性が示唆された。しかしながらその割合は低く、おおむね結晶性のVCz膜である。一方、NMAAを蒸着するとイオンエネルギーの低い条件でも容易に重合膜が得られ、同じビニル系分子材料であっても成膜挙動にVCzと大きな差異が見られた。 そこで蒸着ビームの質量分析を行った結果、VCzでは主な蒸着イオン種はVCzの親イオンであったのに対し、NMAAでは親イオンはほとんど観測されず、大部分の蒸着イオンはフラグメントであることが判明した。従ってVCzではカルバゾール環の安定性が高いために、イオン化によっても重合に寄与するような活性種を作りにくいものと考えられる。このように、イオン化蒸着法で生成するイオン種と得られる膜物性は、密接に関連することが示された。
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