本研究では偏極スピン電子検出用のプローブ針の作製が最も重要である。そこで、研究の第1段階としてフォトリソグラフィ法によるプローブ針の作製を試みた。 まずフォトリソグラフィ法の各プロセス中の露光およびエッチング条件の最適化を行った。Si(100)基板上に塗布した約2μm厚のOFPRを下部レジスト層とし、100nm厚のAlスパッタ膜を中間層に、その上に200から300nm厚の上部レジスト層を塗布した構成の3層レジスト上に微細パターンの露光を行った。レジストの現像後、CCl_4ガスを用いたRFプラズマエッチングによりAl層をエッチングし、そのままO_2ガスプラズマにより下部レジスト層のアッシングを行った。以上のようなプロセスにより1〜2μm幅の細線パターン及び最小5μm径のドットパターンがAl膜上に形成できることがわかった。 次に、このようにして作製したリフトオフ用パターン上に、Cu膜をイオンビームスパッタ法で堆積しリフトオフすることでCuプローブの形成を試みた。イオンビームスパッタ法では膜堆積粒子の方向性が良いため、10μm以下の細孔パターンを通して基板に堆積する粒子は膜面に対しほとんど垂直に入射するものであると考えられる。しかしながら、リフトオフ後のサンプルをSEMおよびAFMで観察したが、膜厚の分布が大きくレジストパターン通りのCu細線やドットが得られる条件が比較的狭いことなどがわかった。 これらの実験結果より、イオンビームスパッタ法とリフトオフ法により、プローブ針の作製についての指針が得られた。今後、引き続いてCu/Co/Co_<67>Cr_<33>多層膜を用いたプローブの作製および特性評価を行う予定である。
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