研究概要 |
強誘電体薄膜において,その膜厚あるいは構成微粒子の粒径が100nmのオーダーになると,キュリー点,誘電率,抗電界等の誘電特性が膜厚や構成微結晶のサイズに依存するようになる現象(サイズ効果)があり,学術的にも実用的にも重要視されている.本研究の目的はこのようなサイズ効果の生ずる機構を明らかにすることである.レーザアブレーション(LA)法およびゾルゲル法により厚さ数十〜数百nmの強誘電体薄膜を作製し,その結晶性,誘電特性を測定した.基板として主にPt/Siを用い,原料の強誘電体ターゲットとしてBaTiO_3(BT),PbTiO_3(PT),PZTを用いた.得られた強誘電体薄膜の表面をSEMおよびAFMを用いて観察し,表面がナノメータオーダーで平坦であることを確認した.BT膜のキュリー点は,バルクのそれと比べてやや高温側にシフトし,予想と逆の傾向を示した.これは,膜内の歪みの影響であると考えられ,サイズ効果の解明には応力の影響を考慮する必要があることが示唆される.次にPT膜の成長を,基板温度,酸素導入量を変えて行った.得られた薄膜に対してX線回折,AFM観察および誘電特性の測定を行った結果,良質な強誘電体薄膜が得られたことが分かった.PT膜をシ-ド層としてPZT薄膜をゾルゲル法により成長させ,良質の薄膜を得ることができた.さらに,応力の影響の少ない微粒子を用いて臨界粒径の存在を確かめる実験も行った.また,RHEED観察用CCDカメラを用いて原子尺度での製膜条件を明らかにする研究を行ったが,誘電体ではまだ成長条件の設定が難しく,原子層制御を行うにいたらなかったため,化合物半導体を用いて,基板上へのヘテロ接合機構の基礎的な研究を進めた.
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