研究概要 |
低温焼結Pb(Zr,Ti)O_3セラミックスの原料試料調整段階にポットミル法を導入し、ミリング時間の違いによる粉砕粒子の大きさおよび分布を、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した結果、15時間以上ミリングした粉砕試料間には差異は見られなかった。また、これらを形成したものについて、温度を935℃から800℃の間で焼結し、それぞれの焼結体の密度ならびに電気的特性を測定した結果、900℃までの焼結温度の低減が可能であることが判明した。これは、ポットミル法の採用により、粒子を細粒化できるとともに原料を均一に混合できるためと思われる。したがって、ポットミル15時間、焼結温度900℃の焼結条件を確立することができた。 Pb(Zr,Ti)O_3セラミックスの電気的特性に、悪影響を及ぼす可能性があると考えられた鉛の組成比を変化させ、935℃、90分で焼結した試料について密度ならびに電気的特性を測定した結果、鉛の組成比を0.98とした焼結体が最も良い電気的特性を示し、電気機械結合係数が60%以上となることが判明した。これは、粒界に偏析して焼結体の絶縁性を劣化させる鉛の減少によるものと考えられる。 鉛の組成比とミリング時間を変化させて焼結したPb(Zr,Ti)O_3セラミックスについて、その電気的特性の湿度依存性を測定した結果、25%から90%の相対湿度の変化に対して、比誘電率と誘電損失は相対湿度の増加とともに、増大する傾向を示したが、電気機械結合係数と機械的品質係数はわずかに減少することが明らかとなった。これらに対し、圧電定数は湿度に対してほとんど依存性を示さなかった。以上の結果を詳細に検討することにより、スマート湿度センサの設計が可能になると思われる。
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