(1)アモルファスTbFeスパッタ薄膜 多層膜の作製に先立ちTbFeスパッタ薄膜の磁気特性、磁気弾性特性の組成依存性を詳細に調べた。その結果、Tb_<40>Fe_<60>組成のもので、680ppmに達する超磁歪を示す試料が得られることが分かった。この値は従来報告値である450ppmを大幅に上回る。 (2)TbFe/Fe三層膜・多層膜の特性 上記の結果を踏まえ、Tb_<40>Fe_<60>/Fe_<80>B_<20>/Tb_<40>Fe_<60>三層構造膜を作製し、その磁気及び磁気弾性特性を調べた。その結果、FeB膜を挿入することで、保磁力がTbFe単層膜の約1/20である6Oeという良好な軟磁気特性を示しながら、TbFe単層膜に匹敵する大きな磁歪を示す試料の作製に成功した。またTbFe/FeB層を多数積層した膜を作製し、その特性を調べたところ膜界面におけるTb及びBの熱拡散によって磁歪特性が著しく損なわれることを見出した。これらの三層、多層膜試料では、低磁場における磁歪の立ち上がりはTbFe単層膜とほぼ同程度であり、低磁場での特性改善を必要とすることを見出した。 (3)低磁場磁歪応答の改善 低磁場における磁歪の立ち上がりの改善を目的として、TbFe単層膜に対して熱処理効果、第3元素添加を試みた。その結果、熱処理を施すことにより著しい特性の改善が見られた。この原因は内部応力の緩和によるものと微結晶析出の二つの可能性があり、今後の検討課題として残された。またこの方策とは別に、第3元素としてTbと逆符号の異方性を示すHoを添加した試料を作製し、その特性を調べた。この結果、Hoの添加により顕著な特性の改善が見られ、従来知られているDy添加効果と同様の効果が得られることが分かった。
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