1.(100)配向したCo/Au人工格子膜の作製とその構造および磁気異方性に関する研究:NaCl(100)単結晶基板に金(Au)を基板温度300℃で蒸着し、(100)配向したAu下地層を作製した。この上にコバルト(Co)層と金(Au)層を交互に蒸着してCo/Au人工格子膜を作製した。このときの基板温度は100℃とした。積層構造に由来する小角X線回折ピークは明瞭に見られたが、Co/Au人工格子の結晶構造を同定することはできなかった。そこで、Co/Au人工格子膜をNaCl基板から剥離し、電子線回折パターンを調べた。さらに、(100)配向したAu下地層上に厚さ10〜100nmのCo層を蒸着し、Co層の構造を詳しく調べた。その結果、Co層には(100)配向した面心立方晶(fcc)構造のCoと(11.0)配向した六方晶(hcp)構造のCoが共存することがわかった。垂直磁気異方牲はCo層の厚さに関係なく負で、界面異方性成分はほぼゼロであった。体積異方性成分は負で、その大きさはAu下地層を厚くすると大きくなり、薄膜の形状異方牲(反磁界エネルギー)に近づいた。また、膜面内には4回対称の磁気異方性が見られた。その大きさはCo層が厚くなるほど大きくなったが、Au下地層の厚さにはほとんど依存しなかった。 2.(100)配向したAg下地層上にスパッタしたCo-Au合金膜の構造と磁気異方性に関する研究:NaCl(100)単結晶基板上に銀(Ag)をスパッタした。基板加熱無しで(100)配向したAg下地層が得られた。この上にCoとAuを同時にスパッタした。飽和磁化の大きさはAu含有量の増加とともにバルクCoの値から単純希釈の線に沿って単調に減少した。しかし、Co-Au非平衡合金の形成やCoとAuの分離を示すようなX線回折ピークは見られなかった。実効的な垂直磁気異方性は組成に関係なく負であり、Auの含有量の増加とともにゼロに近づいた。
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