研究概要 |
当該年度は各種電極(Pt,Ir,IrO_2)基板上へのPb(Zr,Ti)O_3(PZT)薄膜のMOCVD(Metalorganic Chemical Vapor Deposition)成長の成膜条件の更なる確立、電極形成技術の確立及びメモリ素子として重要な各種電気特性の測定を行った。 強誘電性を示すペロブスカイト構造のPZT膜は約600℃で再現性良く得られたが、さらに6-8インチの大型シリコンウエファー上にも膜厚分布±1.5%程度のPZT膜を堆積させる技術を確立した。PZTキャパシタ構造において半導体基板上のPt,Ir,IrO_2等の下部電極の配向性はその上に堆積したPZT膜の結晶性に影響を及ぼすため、その最適スパッタ条件の確立を図ったところ、高配向電極膜を得ることが出来た。またPZT薄膜の誘電率、強誘電性、スイッチング特性、リ-ク特性等は下部電極の配向性に大きく影響を受けることがわかった。メモリ素子の実用化で問題となる分極反転疲労に関しては、上部及び下部電極の種類や電極形成条件に大きく依存することを示した。とりわけ分極反転疲労特性においては、従来のPt/PZT/Pt/SiO_2/Si構造のものに比べIr/IrO_2/PZT/Ir/IrO_2//SiO_2/Si構造のものが10^<12>回のスイッチングに対しても非常に優れた特性を示すことを、MOCVD法で作製したPZT薄膜で初めて示した。またその際、上部電極形成時のアニーリング処理の重要性もあわせて明らかにした。電子顕微鏡による界面の観察や二次イオン質量分析法(SIMS)による強誘電体/金属あるいは酸化物導電体界面の詳しい分析は現在進行中であるが、IrやIrO_2がPZT膜の組成成分の拡散ブロック層の役割を果たしている可能性がある。
|