有機薄膜を繰り返し積層した超格子構造及び色素分子を分散させた導電性高分子を電界発光(EL)素子に適用し、その発光スペクトル、発光強度、時間応答特性に特異な量子効果を見い出した。以下その概要いついて述べる。 1)青色の発光を示すシクロペンタジエン錯体(PPCP)/ジアミン誘導体(TPD)を用いて有機分子線蒸着法により超格子構造の作製を行い、電界発光(EL)素子に適用しその発光スペクトルの偏光特性及び時間応答特性に特異な現象を見いだした。PPCP/TPD超格子構造EL素子のスペクトルはPPCP/TPDヘテロ構造素子、量子井戸構造素子ともにPPCPからの発光波長に相当する460nmにピークを持つ発光が観測されるが、量子井戸構造の周期が短い短周期の量子井戸構造では600nm付近の長波長側に発光が現れる。周期が短くなるに従い600nm付近の発光は増加するが、短周期量子井戸構造ではTE偏波光はヘテロ構造素子と同じ応答波形が観測されるが、TM偏波光は応答が遅くなっている。このことは、短周期量子井戸構造ではTM偏波光の発光スペクトルが長波長側にシフトし、さらに時間応答も変化している。 2)導電性高分子のポリ(3-アルキルチオフェン)(P3AT)に色素分子のPPCP、TPD等の色素分子を分散させた薄膜をEL素子に適用することにより、P3ATからの発光が増強されることを見いだした。エネルギーバンドの観点からはP3ATは量子井戸構造を形成し、励起子閉じ込めの増強により発光効率の増強効果がみられたと考えることが出来る。
|