研究概要 |
CuInSe_2は太陽電池の吸収層材料として有望な半導体の一つである.我々は,そのCuInSe_2薄膜の作製方法の一つである電着法について,前年度に続いて研究を行ってきた.今年度は,膜表面の平滑化を目的として,従来の電着法を改良したパルス電着法について研究を行った.改良点は,カソードに印加する電位をパルス状に変化させる点である.研究経過としては,カソードに印加するパルス波形のデューティサイクルθ(θは周期に対する電位を加えた時間)や周期による膜への影響,電解液中のイオン濃度や電解液のpH,温度による膜への影響について調査した.実験に用いた電解液には,CuCl_2,InCl_3,SeO_2を含む水溶液を用いた.カソード基板にはネサガラスを用い,その上に電着膜を作製した.As-deposited膜は窒素雰囲気中で400℃,30分間アニールを行った.最も結晶性が良く,膜表面が平滑でカルコパイライト構造をもつ単相のCuInSe_2薄膜が得られる条件は,カソードに印加する方形パルス電位液形(θ=33%,周期T=3ms,パルス電位E_s=-0.8VvsSCE),電解液(pH=1.65,温度:40℃),アニール条件(400℃,30分)であることが明らかになった. 次に,予備的な実験としてCuInSe_2電着膜にCdSとのヘテロ接合を試みた.この結果,整流性は確認できたが,光起電力はわずかしか確認できなかった.この原因として,基板に用いているネサガラス(SnO_2/glass)中のSnがCuInSe_2膜中に拡散することによるものと考えられる.この問題は,今後の課題として取り組む必要がある.
|